築100年の蔵DIY|開けにくかった引き戸から、吊り戸へ。

築100年の蔵。

床を張り替え、骨組みを整え、少しずつ手を入れてきた。

「怖くては入れない」

あの一言から始まったこのDIY。

それでも、入口だけは変わらなかった。

重いわけではないのに、なぜか開けづらかった引き戸。
長年の歪みや老朽化が、少しずつ動きを鈍らせていたのだと思う。

今回、そこを吊り戸へと変えることにした。

100年分の埃を、水でほどく

洗う前(表面)
ワックスがけ後(表面)
洗う前(裏面)
ワックスがけ後(裏面)

取り外した建具を外へ運ぶ。

光の下で改めて見ると、思っていた以上にくすんでいた。

壊れているわけではない。重たいわけでもない。ただ、長い時間がそのまま残っていた。

ホースの水をゆっくりとかける。
最初は濁った水が流れ、木目はどこか曇ったままだった。
何度か水を当て、ブラシでやさしくこすると、少しずつ木の表情が戻ってくる。

そして、乾かしたあとに蜜蝋ワックスを薄くのばした。染み込むように、ゆっくりと。
さっきまでくすんでいた木肌が、ほんのり艶を帯びる。

派手な変化ではない。けれど、確かに息を吹き返した。
削るわけでも、塗り替えるわけでもない。
ただ、整える。

この建具を、もう一度この蔵の入口に立たせるために。

吊り戸にするための下準備

水で洗い、蜜蝋をなじませた建具。

見た目は整った。
けれど、そのままでは吊り戸にはならない。

まずは、中心を出す作業から。レーザーで基準線を引き、差金を当てて寸法を確認する。

目分量では決めない。吊り戸は上で支える構造。中心がずれれば、戸はわずかに傾き、動きに違和感が出る。

位置を決め、ドリルドライバーで慎重に穴をあける。そして、コマのついた金具をボルトとナットで固定する。

古い建具に、新しい力のかかり方を与える。
ビスではなくしっかり締め込むためのボルトナット。この戸は、これから上で支えられる。

金具が収まった瞬間、引き戸だった建具が、“吊り戸になる準備”を終えた。

次は、レール側の水平を出す作業へ。

引き戸から、吊り戸へ

スペーサー(受け木)に基準線を決める

スペーサー(受け木)に基準線決め
スペーサー(受け木)にレール取付

レールをどこに取り付けるか。まずは、スペーサーの位置を決めるところから始めた。

レーザーで基準線を出し、メジャーで寸法を確認する。
何度も測り直し、ようやく取り付け位置を決めた。
その基準線に合わせて、スペーサーにレールを固定していく。

ところが、ここで思わぬ苦労があった。

スペーサーの材が、わずかに反っていた。
レールを沿わせるように取り付ける必要があり、ビスを締めていく作業は想像以上にやりにくい。
まっすぐ取り付けているつもりでも、少し油断すると位置がずれる。
何度も確認しながら、慎重に固定していった。
こうして、ようやく吊り戸を支えるレールが取り付けられた。

だが、このスペーサーが後で思わぬ隙間を生むことになる。

5cmの隙間という誤算

レール付きスペーサー取り付け
吊り戸はめ込み
5㎝の隙間

レールの取り付けが終わり、いよいよ建具を吊るす。
コマをレールに差し込み、ゆっくりと建具を持ち上げる。
位置を合わせ、そっと手を離なすと何とか収まった。

そう思ったのも束の間だった。

入口と建具のあいだに、およそ5cmの隙間ができていた。

原因は、スペーサー。

レールを取り付けやすくするため、スペーサーを入れて施工したのに、その厚みの分だけ建具の位置が外側へ出てしまった。

これでは、せっかくの吊り戸も入口としての役目を果たさない。見た目も、納まりも、どうもしっくりこない。

一度取り付けたレールを前に、しばらく立ち尽くした。

直付けという決断

戸受け取外し
レール直付け
隙間が改善された

このままにするか。それとも、やり直すか。

しばらく考えたあと、スペーサーを外すことにした。
レールを直接取り付ける、直付け。
ただ、気になっていたのはレールの固定穴が柱の位置に来るかどうかだった。
柱に効かなければ、強度が出ない。

位置を確認しながらレールを当ててみる。
すると、やはり問題があった。

柱に取り付けられていた戸受けがレールの取り付けを邪魔していた。
心配していたことが、的中した。
このままではレールが取り付けられない。

急遽、その戸受けを取り外す。
スペースができたところで、改めてレールを柱に固定する。

こうしてようやく、直付けでレールを取り付けることができた。

初めてスッと動いた瞬間

動作確認
戸止め治具取付け
吊り戸完了

レールの取り付けが終わり、もう一度、建具を吊るす。
コマをレールに差し込み、ゆっくりと建具を持ち上げる。
位置を合わせ、そっと手を離す。建具は静かに収まった。

恐る恐る、横へ動かしてみる。引きずる音はしない。引っかかる感触もない。
スッと、動いた。あれだけ悩み、何度もやり直した場所。それでも最後は、何事もなかったかのように動く。

引き戸だった建具が、吊り戸として動き出した瞬間だった。

動作を確認したあと、戸がぶらぶらしないよう、下に治具を取り付ける。
そして、作業の途中で取り外していた戸受けも元の位置に取り付け直す。

これで、吊り戸の取り付けは完了。

蔵の入口に、新しい動きが生まれた。

蔵の入口が変わった

開けにくかった引き戸は、吊り戸へと変わった。

作業として見れば、レールを取り付け、建具を吊っただけかもしれない。

それでも、入口が変わると蔵の空気まで少し変わった気がする。

戸は軽く動き、開け閉めもずっと楽になった。

「怖くては入れない」

あの一言から始まった蔵DIY。

まだ途中ではあるけれど、少なくとも今は、そう感じる場所ではなくなった。

築100年の蔵に、また一つ、新しい時間が重なった。

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