黒大豆畑を襲う鹿被害|6000株の被害を記録した丹波篠山の農家の3年間

丹波篠山の山あいで黒大豆を栽培していると、自然の豊かさを日々感じます。

山のすぐふもとに広がる黒大豆畑。
静かな田舎の風景の中で、毎年作付けを続けてきました。

しかしその一方で、農家を悩ませる存在もあります。

それが 鹿による食害です。

最初に被害を受けたのは2023年。その頃はまだ、「少しかじられたかな」という程度でした。
ところが翌年、畑の様子は大きく変わります。定植した黒大豆が、一夜で畑から消えたのです。

それからというもの、鹿との静かな闘いが始まりました。

このページでは、丹波篠山で黒大豆を栽培する農家として、2023年から2025年までの鹿被害の記録をまとめています。

山のふもとに広がる黒大豆畑

黒枝豆収穫時期
黒大豆収穫時期
雪景色

丹波篠山の山あいには、黒大豆畑が広がっています。

山のすぐふもとにある畑。周りを見渡せば、すぐそこに山の緑があります。

春から夏にかけて苗を植え、秋には丹波篠山名物の黒枝豆として収穫を迎える。

この土地の気候と土は黒大豆に合っていて、昔から多くの農家が黒大豆を育ててきました。

荒木農園でも、この畑で黒大豆を栽培しています。

2023年の夏、畑の黒大豆も順調に育っていました。

ところがこの頃から、畑で 少し気になる変化が見え始めます。

それが、鹿による食害の始まりでした。

最初の異変は2023年の夏

鹿の被害を最初に感じたのは、2023年の夏でした。

黒大豆の苗も順調に育ち、畑が少しずつ緑で埋まり始めた頃です。

ただ、この地域ではもともと鹿よりイノシシの被害の方が多い場所でした。
そのため畑の対策も、イノシシを想定したものが中心です。
電気柵も 3段張り。これまで大きな問題はありませんでした。

ある日、畑を見に行くと少し様子が違う場所がありました。

黒大豆の葉が、ところどころ食べられている。
最初は虫の被害かと思いました。しかし、よく見ると葉のなくなり方が違います。

きれいに食べられた跡。そして畑の周りには、見慣れない足跡。

その正体は山から降りてきた鹿でした。

この頃はまだ被害も小さく、「鹿もいるんやなぁ」くらいの感覚でした。

しかし、この出来事が後に続く鹿被害の始まりでした。

2024年、朝畑に行くと言葉を失った

苗定植
一夜にして全滅
引きちぎられた苗

鹿の被害が本格的に出たのは、2024年の夏でした。

黒大豆の苗を定植して、およそ 1週間ほど経った頃です。
苗も活着し、これからぐんぐん育っていく時期。

農家としても少し安心するタイミングでした。

ところがある朝、畑を見に行くと違和感がありました。

「なんか畑の様子がおかしい…」

近づいてみると、そこにあるはずの苗がありません。
昨日まで並んでいた黒大豆の苗が、ほとんど消えていたのです。

残っているのは引きちぎられた株だけ。
この畑は 1反(約1000㎡)
植えていた黒大豆は、一夜でほぼ全滅していました。

前年の2023年は、葉を食べられる程度の被害でした。

鹿は新芽を食べていくものだと思っていました。
ところがこの年から、苗の芽を食べるために株ごと引き抜くようになりました。

そのため畑には引きちぎられた苗だけが残っていました。
2023年にも被害はありましたが、ここまでの被害は初めてです。

さすがにこの時は、しばらく畑の前で立ち尽くしました。

2025年、被害は6000株に広がった

この年始めて植えた畑
収穫体験予定畑
土手を蹴り上げた後

そして 2025年の夏
鹿の被害は、さらに広がりました。

荒木農園を起ち上げた当初、黒大豆の畑は 4.5反からのスタートでした。
そこから少しずつ畑を増やし、毎年1反ほど作付けを広げてきました
そしてこの年、黒大豆を植えた畑は 8.5反
これまでで過去最高の作付け面積でした。

ところが鹿の被害が出たのは、5.5反の畑
植えた苗の数はおよそ1万株
しかし鹿の被害を受けたのは、6000株近く
半分以上の苗が食べられたことになります。

前年は一晩で畑が全滅する被害でしたが、この年は少し様子が違いました。

日に日に被害が増えていったのです。

昨日は大丈夫だった場所が、次の日には苗がなくなっている。
畑を見回るたびに、引き抜かれた苗が増えていきました。

黒大豆の芽を食べるため、苗ごと引き抜かれた跡です。
一度引き抜かれてしまうと、苗はもう植え直すことができません。

鹿にとっては一晩の食事でも、農家にとっては春から準備してきた作物です。

被害の広がりを見て、さすがに対策を強化する必要があると感じました。

黒大豆を守るための鹿対策

この地域では、もともと鹿よりイノシシの被害の方が多い場所でした。
そのため畑の対策も、イノシシを想定したものが中心です。

しかし鹿の被害が増え始め、これまでの対策では足りなくなってきました。

そこで黒大豆畑を守るため、年々対策を強化してきました。

イノシシ対策だった電気柵3段

この地域では、もともと鹿よりもイノシシの被害の方が多い場所でした。
そのため畑の対策も、イノシシを想定したものが中心です。

荒木農園の畑でも、周囲には 電気柵を3段張りにしており、低い位置に2段、高い位置に1段。

イノシシは基本的に下から潜り込んで侵入してくるため、下の2段を重点的に張る形です。
そして一番上の1段は、鹿の侵入も一応考えて高い位置に張っていました。
この方法で、これまではイノシシの被害を防ぐことができていました。

鹿の被害が本格的に出るまでは、この対策で大きな問題はありませんでした。

鹿対策で電気柵を4段に

しかし鹿の被害が出始めると、これまでの電気柵では十分とは言えなくなりました。

イノシシは下から侵入しますが、鹿は 跳び越えて侵入してくることがあります。そのため最初は高さが足りないのではないかと考えました。

しかし畑を見ているうちに、別の可能性も感じるようになりました。

3段の電気柵だと2段目と3段目の間に大きな隙間があります。もしかすると鹿はそこからも侵入しているのではないか。

そう考えるようになり、対策として電気柵を 4段張りに変更しました。
段数を増やして隙間を小さくし、鹿の侵入を防ごうとしたのです。

鹿の被害が増えたことで、畑の対策も 鹿を想定した形に変えていくことになりました。

それでも鹿は隙間から入ってくる

電気柵を4段にするなど、対策は強化してきました。しかし鹿の被害がなくなることはありませんでした。

電気柵には一つ盲点があります。線に触れれば必ず電気が流れるわけではありません。

鹿の場合、体の毛に触れただけでは電気が流れないことがあります。電気柵の効果を出すためには、鼻などの湿った部分が線に触れることが前提になります。

そのため鹿が体をすり抜けるように通ると、電気が流れないまま侵入されてしまうこともあります。

対策をしても被害が出る理由が、少しずつ分かってきました。

鹿の被害は、簡単には止まりませんでした。

海苔網も設置

電気柵の対策だけでは、鹿の侵入を完全に防ぐことはできませんでした。

そこでさらに対策として、畑の周囲に **海苔網(防獣ネット)**も張ることにしました。

電気柵の 支柱に網を引っ掛ける形で設置し、鹿が畑の中に入りにくくする方法です。ただ、この対策は自分の中ではあまりやりたくない方法でもありました。

もし鹿が網に引っかかれば、暴れてしまう可能性もあります。そんな姿は、できれば見たくありません。

そのため海苔網の設置は、本当に最終手段のつもりでした。

それでも黒大豆を守るため、できる対策として設置することにしました。

しかしここでも、思っていた以上に厳しい現実が待っていました。

しかし鹿は飛び越えてくる

蹴り上げた後と思われる
鹿の足跡だけが残る
鹿の足跡だけが残る

電気柵を4段にし、さらに海苔網も設置しました。
これでさすがに鹿の侵入は防げるのではないか。
そんな期待もありました。

しかし現実は、そう簡単ではありませんでした。

鹿はジャンプ力があり、網を飛び越えて侵入してくることもあります。
せっかく設置した網も、飛び越えられてしまえば意味がありません。

対策をしても、畑を見回るとまた引き抜かれた苗が見つかる。
この頃はやれるだけのことをやっても駄目だったという思いもあり、かなりショックを受けていました。

そして、これからどう対策していけばいいのか。

正直なところ、絶望感に近い気持ちで打ちのめされていました。

今年、新しい武器を導入

電気柵を強化し、海苔網も設置しました。
それでも鹿の被害は止まらず、正直なところ、どうしたら良いのか分からなくなっていました。

そんな中で、今年新たに導入したのが赤外線センサーです。

動物が近づくと光と音で威嚇する装置で、畑の周囲に設置しました。
作動は 夜間のみに設定しています。鹿が活動する時間帯に反応するようにするためです。
音は銃声やオオカミの遠吠えなど、13種類あり、切り替えて使うことができます。

もし効果が見られるようであれば、今後は 台数を増やすことも考えています。

まだ設置して間もないため、どこまで効果があるのかは分かりません。

それでも黒大豆畑を守るための新しい試みの一つです。

夜中のパトロール中に出会った鹿

これは夜中に畑の様子を見回っていた時に撮れた写真です。

被害が続いていた頃は、どうしても気になってしまい夜に畑の周りをパトロールすることもありました。

そんなある夜、畑の近くで鹿の姿を見つけました。

「犯人はお前らかー」

そんな気持ちで追いかけてみると、鹿はそのまま山の方へ走っていきました。

その時に気づいたのが、山へ続く獣道です。しかもその道は1か所だけではありませんでした。
畑の周辺には3か所ほどの獣道があり、そこから鹿が出入りしていることが分かりました。

山のすぐそばにある畑では、鹿の生活圏とすぐ隣り合わせで農業をしていることを実感しました。

山のすぐそばで農業をするということ

畑のすぐ後ろには山があり、そこには鹿が暮らしています。

鹿に限らず、山の近くで農業をする以上、獣害はある程度覚悟していました。

しかし正直なところ、ここまで被害が大きくなるとは思っていませんでした。

作物を守るために対策をしても、また被害が出る。

その繰り返しに、日々悩まされることもあります。

向き合っていくしかないと分かっていても、精神的にはつらいものがあります。

それでも畑をやめるわけにはいきません。

対策を考え、また被害が出て、また考える。

そんな繰り返しが、山の近くで農業をするということなのかもしれません。
黒大豆畑を守る試行錯誤は、これからも続きます。

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